「気持ちいぃ〜」目覚めを手に入れたい!
連載「睡眠」

 私たちヒトは人生の3分の1の時間を「睡眠」で過ごすといいます。寝ている間に身体及び脳の疲れを休息させ、修復再生させているのです。したがって、健やかな心身を維持するためには眠る必要があるということ。にもかかわらず、日本人の5人に1人は不眠で悩んでいるという調査報告があります。また、米国睡眠障害研究委員会(Wake Up America)の報告では、チェルノブイリの原発事故もチャレンジャー号の墜落事故もスタッフの睡眠障害(不足)の影響は否めないとも。
人には本来24時間の睡眠、覚醒リズムが存在することが分かっています。しかし、現代の24時間社会に生きる私たちは、交代勤務を始め、より業務作業量や勉強量をこなすためには、睡眠時間を削ってそれらの目的を果たそうとしなければならないのが現状。医療従事者はその際たるものといっても過言ではないでしょう。最近の「睡眠障害による翌日の日中の労働力への影響や、勤務中における集中力の低下や不注意により発生した事故などによる損失を計算した報告」では、なんと“我が国の経済に及ぼす1年間の損失額は3兆5千億万円”にものぼるというのです。
各調査研究からも明らかなように、睡眠はヒト、とくに医療従事者においては非常に重要な位置を占めるといえます。たかが「眠り」、されど「眠り」。快適な睡眠は、心身の健康、ミスのない仕事、そして人生の3分の1に快適をもたらすといえるでしょう。このページではそんな「睡眠」のメカニズムから上質な睡眠を手に入れる極意を毎回連載していきます。

第6回睡眠の基礎知識〜その5

睡眠不足になると、イライラしたり、元気がなくなったりします。一方、「寝る子は育つ」といわれるように、睡眠は身体的な成長にも大きく影響を及ぼしています。睡眠は、生体の構築や修復を行う成長ホルモンの分泌を促したり、生体防御機能の増強を行うなど、単なる休息というよりも、生体ホルモンや免疫系などをたくみに利用して生命維持に大きく影響を及ぼしているのです。今回は睡眠に関する代表的な生体ホルモンと免疫について。

1.睡眠とホルモンの関係

睡眠と同時に成長ホルモン、プロラクチン、副腎皮質ホルモン、性腺刺激ホルモン、甲状腺刺激ホルモンなどの分泌が高まることが分かっていますが、睡眠に関与する代表的な生体ホルモンとしては、次の3つが挙げられるでしょう。

  1. 成長ホルモン…寝る子は育つ
    睡眠に関する働き
    ・脳の下垂体から分泌される。
    ・主に肝臓に働きかけ、骨や筋肉・内臓器官の発育に関わっている。
    ・肌にハリと潤いを与える。
    ・入眠直後の深いノンレム睡眠中に多く分泌される。

    (成長ホルモン分泌量の日内変動)

    睡眠レベルラインが最高レベルに上がりきると成長ホルモンの分泌が始まります。昔から「寝る子は育つ」といわれている所以です。この成長ホルモンは子供の場合は主に発育を促す、大人の場合は傷を負った細胞の修復に欠かせない全身に働く下垂体ホルモン。したがって、カラダがだるい、疲れている、疲れが取れないなどの人は寝不足や熟睡出来ない人だったり、熟睡は出来ているものの夕食時間が遅く食後すぐに(食事から4時間以内)就寝するためホルモン分泌機能が妨げられている事が考えられます。

    ⇒ 眠りで心身の元気を取り戻したかったら、就寝4時間前までに夕食を終わらせましょう。

  2. メラトニン…睡眠促進
    睡眠に関する働き
    ・脳の松果体から分泌される。
    ・生体リズムを調節する。
    ・性腺を抑制し、眠るための準備として深部体温を低下させる。
    ・夕方暗くなる頃から分泌され、身体に眠りの準備をさせる。

    (メラトニン分泌量の日内変動)

    メラトニンを分泌するのは脳の松果体と呼ばれている部分。松果体は網膜が受ける光の量のデータをもとにメラトニンの分泌量を決定します。目に入る光の量が減ると、それを感知した松果体がメラトニンを分泌。メラトニンが分泌されることで、カラダはそれを察知し周囲が暗くなってきたことを知るというメカニズム。このメラトニンには、太陽の光が朝に目に入ってから15時間前後たたないと分泌されないという性質があり、外が明るい日中にはほとんど分泌されません。夕方以降暗くなってくると分泌量が増えてくるのです。夜になるとさらに増えて、午前2時頃に分泌量がピークに達します。メラトニンは脈拍、体温、血圧を低下させることによって睡眠と覚醒のリズムを上手に調整し、自然な眠りを誘う作用があります。

    ⇒ メラトニンの働きをうまく利用するためには、眠る前に部屋をすこし暗くすると眠りに入りやすくなります。

  3. コルチゾール…覚醒準備
    睡眠に関する働き
    ・副腎皮質から分泌される。
    ・代謝促進作用がある。
    ・ストレスを測定する指標となる。
    ・覚醒直前に多く分泌され、身体にストレスに対する準備をさせる。

    (コルチゾール分泌量の日内変動)

    コルチゾールは免疫物質を作る副腎皮質ホルモンで、睡眠中のカラダに蓄積されているブドウ糖や脂肪などの熱源を、カラダのエネルギーとして活用するようにと分泌され、働きます。睡眠中は低く抑えられ、午前3時頃から明け方に最高値に達し、起床後30〜60分のあいだに大量に分泌、その後次第に低下していきます。コルチゾールが早朝に高くなることで、体内にある糖分をエネルギーとして使える形に取り出すことが促進され、夜中何も食べていない後の、朝の血糖値の低下を防いでいるともいいます。また、起床後の大量分泌の現象は、日中に襲ってくるストレスに対処するためで、起床時コルチゾール反応(CAR)と呼び、ストレス状態をよく反映する反応として最近、注目を集めているのです。言い換えれると、日中の活動のために眠りから覚めさせる、天然の目覚まし時計のようなホルモンともいえるでしょう。

    ⇒ ベッドに入るときには仕事のことなどを考えないようにして、コルチゾールを減らし、朝は光をいっぱい浴びてコルチゾールを増やしてみましょう。

【番外 日中のコルチゾール多量分泌は危険】

ストレス源である、ストレッサーの刺激を受けると、脳の視床下部が「ストレスに対処せよ」という指令を副腎へ発信します。それを受けて副腎皮質がコルチゾール、副腎髄質がアドレナリンというストレスホルモンを分泌します。するとドキドキと動悸が速くなり血圧が上昇。脳や筋肉に糖を送り込み、臨戦態勢を整えていきます。このメカニズムは、弱肉強食の自然界で生き抜くための、動物的本能のなごりといわれます。ところが現代社会では、人間にストレスをもたらす刺激は複雑化し、長期化するものが多くなり、慢性的なストレスによってコルチゾールなどのストレスホルモンが過剰分泌になり、自律神経系や内分泌系へ悪影響を及ぼし始めます。ひいては口内炎、耳鳴り、不眠、高血圧、自立神経失調症、円形脱毛症、胃かいよう、心筋梗塞などをひき起こす危険性も。四六時中の臨戦態勢では身も心もグタグタになってしまいますからコルチゾールの分泌を抑える、深い眠りがストレスに負けない心身を生み出すといえるでしょう。

2.睡眠と免疫

ウイルスなど、外部からの侵入者からカラダを守るしくみである「免疫」も、睡眠と密接な関係があります。
生体がウイルスや細菌に感染すると、それらが体内で分解されて生じた物質が、インターロイキン1やインターフェロンなどのサイトカイン類の生産を促進して免疫学的な生体防御反応を誘発するとともに、発熱とノンレム睡眠を誘発すします。つまり、風邪をひいて熱がでると眠くなるのは、単に風邪薬の作用だけではなく免疫系が活発になっていることが関係しているのです。研究でも、ウイルスに感染したときに生体の免疫反応として分泌されるサイトカインはウイルスの増殖を抑制する働きのほかに、脳に作用して睡眠を誘発させる作用を有することが明らかになってきました。病気と闘うための体力回復のためにも睡眠は重要であることがわかります。

実験例 1
ウサギをインフルエンザウイルスに感染させた実験では、感染後、発熱と共に血液中の免疫物質の量が増え、それに続くように深いノンレム睡眠が現れました。ウイルスと戦うために、余計な活動をしてエネルギーを消費しないように、脳が指令しているのです。

実験例 2
ラットを強制的に眠らせない断眠試験を数日間行った実験では、ラットのリンパ節に大腸菌が繁殖し始めました。実験を続ければ確実にラットは細菌感染症で死んでしまいます。この結果は、睡眠を奪ったことにより免疫系が弱まったことを意味します。

⇒ 人間においても睡眠不足により病原体を殺す働きをもつナチュナルキラー細胞が減少することが明らかとなっています。睡眠不足になると風邪をひきやすいことは経験的に知るところですが、寝不足による免疫系の低下が主原因となっているのです。睡眠は健康管理の面からも非常に大切なものです。

このように、生体はホルモンや免疫関連物質、異物や毒物、さらには代謝産物までも活用して、たくみに眠りを調節しています。睡眠機能のもつ多目的性ないし多様性は、これらの例からも理解できるでしょう。


睡眠Topics

快眠グッズ①

眠りに注目が集まる昨今、巷には様々な「快眠グッズ」が溢れています。今回は飲食物に焦点を当てて紹介します。

タンパク質 睡眠を促進するメラトニンの分泌を促します。
睡眠を誘発するトリプトファンというアミノ酸を合成します。
カルシウム イライラを解消する働きがあります。
ビタミンB12 メラトニンの分泌量を調整して、正しい睡眠のリズムを作り出しています。
ビタミンB6 神経伝達をスムーズにする効果があり、睡眠時に必要な副交感神経の働きを高めます。
マグネシウム カルシウム、ビタミンB群を吸収するのに欠かせません。
ホットミルク 牛乳にはカルシウムやトリプトファンが豊富に含まれているため、睡眠前の飲物としては効果的です。
ホットで体が温まり、また飲物なので胃に負担がかかりません。
ハーブティー 特に、気分を落ち着かせる効果があると言われている、カモミール、ベルベーヌ、リンデン、オレンジフラワーが適しています。
生姜湯 生姜には身体を温める作用だけでなく、精神を落ち着かせ眠りを誘う作用もあります。
レタスジュース ヨーロッパでは古くから、レタスに睡眠作用があることが知られています。
<作り方>
リンゴ1/2個、ニンジン1/2本、レタス1枚をジューサーにかけるだけ。
(ニンジンに甘みがあるため、砂糖は使用しない)
グッスミン
<ライオン(株)>
成長ホルモンが増えるとされるトマト酢と抗ストレス成分のCABAを配合した、しっかり休めるサポート飲料。以前はトマト味がきつくて苦手、というヒトもアップル味になってぐっと飲みやすくなったとも。
グリナ
<味の素(株)>
カラダを休息させる作用があるとされるアミノ酸「グリシン」を配合し、体の休息をサポートがコンセプトのサプリメント。グリシンと睡眠の因果関係について、これまで明確な理由は判明していませんでした。しかしながら、2008年6月、日本睡眠学会で、グリシンを摂る事により体温がすみやかに低下することが報告されています。
その他サプリメント メラトニン単体や、前述のハーブやGABAを配合したサプリメントが、多数販売されています。

資料提供…東洋羽毛工業(株)商品開発部 ホームページ http://www.toyoumo.co.jp/