「気持ちいぃ〜」目覚めを手に入れたい!
連載「睡眠」

 私たちヒトは人生の3分の1の時間を「睡眠」で過ごすといいます。寝ている間に身体及び脳の疲れを休息させ、修復再生させているのです。したがって、健やかな心身を維持するためには眠る必要があるということ。にもかかわらず、日本人の5人に1人は不眠で悩んでいるという調査報告があります。また、米国睡眠障害研究委員会(Wake Up America)の報告では、チェルノブイリの原発事故もチャレンジャー号の墜落事故もスタッフの睡眠障害(不足)の影響は否めないとも。
人には本来24時間の睡眠、覚醒リズムが存在することが分かっています。しかし、現代の24時間社会に生きる私たちは、交代勤務を始め、より業務作業量や勉強量をこなすためには、睡眠時間を削ってそれらの目的を果たそうとしなければならないのが現状。医療従事者はその際たるものといっても過言ではないでしょう。最近の「睡眠障害による翌日の日中の労働力への影響や、勤務中における集中力の低下や不注意により発生した事故などによる損失を計算した報告」では、なんと“我が国の経済に及ぼす1年間の損失額は3兆5千億万円”にものぼるというのです。
各調査研究からも明らかなように、睡眠はヒト、とくに医療従事者においては非常に重要な位置を占めるといえます。たかが「眠り」、されど「眠り」。快適な睡眠は、心身の健康、ミスのない仕事、そして人生の3分の1に快適をもたらすといえるでしょう。このページではそんな「睡眠」のメカニズムから上質な睡眠を手に入れる極意を毎回連載していきます。

第8回睡眠の基礎知識〜その7

近年、睡眠の良否が、学業成績や作業性と密接な関係のあることが分かってきています。特に夜間勤務も考えられる医療従事にとっては見逃せない事実。睡眠の重要性と睡眠不足の悪影響を認識して、子供の睡眠教育や自身のミスや事故を未然に防ぎましょう。

1.睡眠習慣と学業成績

2005年『Journal of School Health』9月号に掲載された、小児の睡眠と学業成績に関するこれまでの研究21件をレビューした研究発表によると、中学生から大学生において、質の悪い睡眠、不規則な睡眠習慣、遅い就寝時刻、早い起床時刻が学業成績低下と関連していることが明らかとなりました。2009年の米国睡眠学会で発表された研究では、良質の睡眠が、学業成績の向上に関与していることも分かったのです。

  1. 夜型社会が子供の眠りを奪う

    下のグラフは、2003年に調査した「睡眠時間が6時間より少ない子供の割合」です。


  2. 睡眠習慣と成績との関係

    アメリカの高校生について調査したデータ(平日)です。


2.眠気と作業性

睡眠不足は日中の疲労感と眠気につながるだけでなく、作業効率の低下や思わぬ作業ミスの発生を引き起こします。世界中を震撼させた、アメリカのスリーマイル島で起きた原子炉爆発事故(1979年)、アメリカで発生したボーイング機の墜落事故(1995年)、チェルノブイリ原子力発電所の爆発事故(1986年)、スペースシャトル「チャレンジャー号」の爆発事故(1986年)、アラスカ沖での巨大タンカーの座礁事故(1989年)における事故後調査では、いずれも作業員やパイロットなどの睡眠不足からの人為的なミスが原因と考えられているのです。これらは、現代人の睡眠事情が大事故につながった特別なケースとはいうものの、小さな居眠り事故については日常的に発生していることも忘れてはならないでしょう。

  1. 作業ミスはいつ起きる?

    スウェーデンのガス作業従事者74,927名での、作業ミス発生の時間帯分布です。作業ミスは午前2時頃に最も多く、日中では午後2時頃に多い事がわかりました。



  2. 眠気のリズム

    人間の眠気は、大きくは24時間周期(午前2−4時前後に眠気のピークがくるとされるサーカディアンリズム)、12時間周期(午前、午後の2−4時前後に眠気のピークがくるとされるサーカセミディアンリズム)、2時間周期(約2時間周期で眠気と覚醒のリズムを繰り返すウルトラディアンリズム)が存在するとされています。

    ⇒ 両方のグラフの横軸(時刻)を揃えてみると、眠気の強い時間帯と作業ミスの多い時間帯はほぼ一致します。


3.交通事故の危険性

ある大学の睡眠に関する調査によると、睡眠不足は交通事故の確率を1.4倍大きくするといいます。交通事故の発生時間を調べてみると、事故の件数は夜〜深夜の時間帯が非常に多く、居眠り、睡眠不足が事故の原因になるという事が見えてきます。

  1. 発生時間帯の分布

    疲労が原因による交通事故6,052件の発生時間帯分布です。作業ミスと同様に午前2時頃が 最も多く、日中では午後2時頃に多い事がわかります。


  2. 睡眠不足と注意力

    睡眠不足時と飲酒時について行った「注意力テスト」の結果を相関させたグラフです。15時間起き続けた状態は酒気帯び運転と同等の、18時間起き続けた状態は酒酔い運転と同等の注意力になっている事がわかります。

    ⇒ 自分は夜起きていても大丈夫、お酒は飲んでないから運転もなんのその、と思っていても、それはあくまで主観的な眠気といえるでしょう。実際は、主観的な眠気と本質的な眠気は大きく解離しているということを認識することが重要です。



睡眠Topics

夏の睡眠あれこれ〜その@
夏は、睡眠にとって最も条件が悪いシーズンです。誰もが経験したことのある「寝苦しさ」や、「眠った気がしない」「体の疲れがとれない」という不快感は、夏特有のものといえるでしょう。そこで、今回は2回にわたり、夏の睡眠について検討していきます。まず今月はその原因である「夏の睡眠事情」について、来月はその対策法として「真夏の夜の快眠術」について特集。今年の夏は快適な眠りで乗り切りってください。

寝苦しさの原因は‘湿度’です。

睡眠はまず「寝付く」ことから始まりますが、夏の夜はこの段階でひと苦労します。蒸し暑い夏の夜は、温度が発汗を招き、発汗が湿度を高める・・・・。夏の寝床で毎夜繰り返される、このような悪循環のために、多くの人が寝付けずに苦しんでいるのです。



多すぎる寝返りが夏の睡眠を浅くしてしまうんです。

やっと眠りについても、良質の睡眠が確実に得られるわけではありません。眠っている間に、人間は「寝返り」という大切な生理現象を起こします。

夏の朝の、「眠った気がしない」「体の疲れがとれない」という不快感は、寝返りの増加によって正常な睡眠リズムが崩れてしまうことに起因しているのです。



激しい温度差が夏の睡眠リズムを崩すのに加担。

睡眠は昼間の活動内容に大きく左右されます。人間の昼行性を支えている自律神経のバランスが、昼間の屋内と屋外の激しい温度差により崩されて、睡眠に悪影響を及ぼします。



もう一つの睡眠リズムを崩す大きな原因はクーラーといえそうです。

  • クーラーをONにしたままで眠ると、腰痛・腹痛・関節痛・胃腸障害、また、女性にとっては特に気になる肌荒れなどが起こります。そして、睡眠中に風邪をひいてしまったり、寒くて目が覚めたという方も多いでしょう。
  • その理由は、睡眠中の体温の低下にあります。人間の体温は、眠りに入ると代謝量を抑えようとして自然に低下し、安静状態になります。体温が低下した状態は、すなわち抵抗力が弱まった状態であるためです。
  • このようにクーラーは、抵抗力が弱まっている体に拍車をかけるような温度変化を与えるため、人体に悪影響を及ぼし、眠りを浅くしてしまうのです。

資料提供…東洋羽毛工業(株)商品開発部 ホームページ http://www.toyoumo.co.jp/